☆かすみんの小説置き場☆

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短編集
毛虫のけむけむ


毛虫のけむけむ

2009.12.11  *Edit 

 ある日けむけむは、たんぽぽに出会いました。
「毛虫さん、こんなところまでいらっしゃるなんて、何か探しものですか? こっちのほうに、葉っぱはありませんよ」
 たんぽぽはけむけむに言いました。
「葉っぱを探していたら、迷子になってしまって。お腹がすいて、もう動けないの」
 たんぽぽは心配そうに、
「そうですか」
と言いました。何か考えているようです。
 たんぽぽの葉っぱを見ていると、けむけむのお腹が、ぐぅーとなりました。
 それを聞いたたんぽぽは、くすりと笑いました。
「わたしの葉っぱを食べますか?」
「えっ」
 けむけむはたんぽぽを見上げます。
「そのかわり、お願いがあります」
 黄色い頭をけむけむのほうに向けて、たんぽぽは言いました。
「お願い?」
「はい。ここはビルがたくさん並んでいて、お日様の光もなかなか届かないし、風もあんまり吹きません。だから、わたしは自分の種を飛ばすことができないのです」
 けむけむはたんぽぽをじっと見つめました。なるほど、けむけむが今まで見たたんぽぽよりも、細くて弱々しく見えます。
「お日様の光があんまり届かなくて、種はこの子だけしかいません。この子を、お日様が当たる場所まで連れて行ってもらえませんか?」
 ふわふわした綿毛が一本だけ、たんぽぽのとなりで揺れています。
 ぐぅー。
 もう一度、けむけむのお腹がなりました。
「うん、わかった」
「ありがとうございます」
たんぽぽはうれしそうに言いました。
けむけむは、たんぽぽの葉っぱをむしゃむしゃと食べました。
ちょっと苦くて食べにくかったけれど、お腹のすいていたけむけむは、たんぽぽの葉っぱを一枚食べました。
「ごちそうさまでした」
 けむけむはにっこり笑って言いました。
 たんぽぽもうれしそうにうなずきます。
「じゃあ、この子をお願いします」
 たんぽぽはそう言うと、ふるふるっと体をゆすって、綿毛をけむけむの頭の上に落としました。
「ここの道をまっすぐ行くと、草がたくさん生えたところに出るはずです。わたしが昔、いたところです」
「わかった。ありがとう」
 けむけむはこくりとうなずきました。
 さぁ、出発です。
 けむけむはたんぽぽにさよならを言うと、たんぽぽが教えてくれた方向へ、のそのそと進みはじめました。
 しばらく進んでいくと、大きな道路に出ました。車がときどき通っています。
 けむけむは車に気をつけながら、道路をわたりはじめました。
とちゅう、車が頭の上を通っていきました。けむけむは種を飛ばさないよう、小さく体を丸めます。
 車がいなくなると、けむけむはもう一度、進みはじめました。
 やっと道路をわたりおえると、今度は人間が歩いている道路につきました。
「人間だ……」
 けむけむは上を見上げました。
自分よりもなん十倍も、なん百倍も大きな生き物が、目の前を通りすぎていきます。
 けむけむは踏まれてしまわないように気をつけながら、道路をわたりおえました。
「もうすぐかな」
 けむけむは道路のすみっこでふぅ、と息をつきました。そしてまた、のそのそと進みはじめます。
 ビルの間を抜けると、小さな道路に出ました。草がすこしだけ、道ばたに生えています。たんぽぽの言っていた、草がたくさん生えているところはもう少しのようです。
 そう考えると、けむけむの足取りも自然と軽くなりました。のそのそのそのそ、小さな道路を進んでいきます。
 すると突然、小さな女の子が、けむけむの前に現れました。けむけむはびっくりして、立ち止まりました。
「毛虫さん、こんなところで何してるの?」
 女の子はけむけむの前に座りこむと、小さく首をかしげました。けむけむはじっと女の子を見つめます。
「葉っぱはこっちにはないよ。あたしが連れてってあげる」
 女の子は近くにあった木の棒を拾うと、その棒でけむけむをすくい上げました。
「あっ!」
 その拍子に、けむけむの頭の上の綿毛が、ふわりと宙にまいました。
 女の子はそんなことなど気にせずに、どんどん歩いていきます。
(この棒の上に乗っておけば、葉っぱをお腹いっぱい食べられる。でも……)
 けむけむは綿毛がふわふわと浮いているほうを見つめました。
「たんぽぽさんと約束したから!」
 けむけむは、ぴょんっと棒から飛びおりました。
「あ、毛虫さん!」
「いたた……」
 道路に飛びおりた拍子に、体を打ちつけてしまったようです。
けむけむはくるりと体を丸めました。そうすると、痛みが少し楽になる気がしました。
「毛虫さん、大丈夫? 死んじゃった?」
 地面で丸くなっているけむけむを見て、女の子が心配そうにけむけむのそばにしゃがみこみます。
「こんなところにいたの?」
「あ、ママ」
 そのとき、大人の女性の声がしました。女の子の母親のようです。
「もうすぐご飯よ。帰ってらっしゃい」
 女の子はちらりと、けむけむのほうを見つめていましたが、
「はぁい」
と言うと、母親といっしょに歩いていってしまいました。
 けむけむは女の子の足音が聞こえなくなると、丸めていた体をそろりとのばしました。だいぶ痛みは治まっているようです。
「綿毛さんを探さなくちゃ」
 けむけむは綿毛を落としてしまったところまで、のそのそと進みはじめました。
「この辺のはずなんだけど……」
 けむけむはきょろきょろと辺りを見回したり、夕やけ空を見上げたりしましたが、綿毛はどこにも見当たりません。
 ぐぅー。
けむけむのお腹が、またなりました。たんぽぽの葉っぱを食べてから、ずいぶんと時間がたってしまったようです。
けむけむは道ばたに生えていた葉っぱを一口かじると、また綿毛を探しはじめました。
山の向こうにお日様が隠れはじめても、綿毛は見つかりません。けむけむのお腹は、さっきからぐぅーぐぅーとなってばかりです。
お腹もすいた上に、歩きつかれたけむけむは、とうとう道ばたに座りこんでしまいました。
「たんぽぽさんと約束したのに……。このまま見つからなかったらどうしよう」
 けむけむがしょんぼりしていると、道の向こうからけむけむを呼ぶ声がしました。
「やぁ、けむけむ。久しぶりだね。今までどこへ行っていたの?」
 けむけむが声のしたほうを見ると、毛虫仲間のけっしーが、のそのそとこちらのほうへやってきています。
「道に迷っちゃって。ずっと向こうのほうにまで行ってしまってたの」
 ぐぅー。
けむけむの言葉が終わるのをまっていたかのように、けむけむのお腹がなります。けむけむは恥ずかしそうにうつむいてしまいました。
「お腹がすいてるのに、どうしてこんなところにいるの? 葉っぱなら、あそこにいっぱいあるよ」
 けっしーは首をかしげながら言いました。
「大切なものをなくしてしまって……。それを探してたの」
 けむけむは顔を上げました。
 すると、けっしーの頭の上で、ふわふわとゆれる白いものが見えました。
 けむけむは驚いて、けっしーにたずねました。
「けっしー、その頭の上のものはどうしたの?」
 けっしーは自分の頭を見ながら言いました。
「さっき空からふってきたの。ふわふわしててかわいいから、そのまま飾りにしちゃった」
 けむけむが落とした綿毛に違いありません。
「けっしー、君の頭のふわふわしてるの、ボクが探してたものなんだ」
「え?」
 けむけむはけっしーにたんぽぽとの約束を話しました。
「そうだったんだ。じゃあ、これはけむけむに返すよ」
 けっしーは、けむけむの頭の上にそっと綿毛をのせました。
「ありがとう、けっしー!」
 けむけむはにっこりと笑って言いました。けむけむの頭の上にもどった綿毛も、うれしそうにふわふわとゆれています。
「じゃあ、早く綿毛さんを原っぱに連れていってあげなくちゃ」
 けっしーはそう言うと、けむけむの前をのそのそと進みはじめました。
「こっちだよ」
 けむけむもその後に続きます。
 のそのそのそのそ、けむけむとけっしーは道路を進んでいきます。
 しばらくすると、大きな原っぱにつきました。
たんぽぽが言っていた、葉っぱがたくさんあるところのようです。その証拠に、たんぽぽの黄色い頭が、あちらこちらに見えています。
「ここならきっと、お日様の光もいっぱい浴びられるし、風もいっぱい吹くよ」
 けっしーはにっこりと笑っていいました。
「うん、きっとそうだね。ありがとう、けっしー」
けむけむもにっこり笑って言いました。
けむけむは、いちばんお日様の光が当たって、いちばん風が吹きそうな場所を選んで、綿毛をそっと地面におろしました。
綿毛はそこの場所が気に入ったかのように、ふわふわと楽しそうにゆれています。
けむけむはなんだかうれしくなって、もう一度、にっこりと笑いました。
「それじゃあ、綿毛さん。ボクたち、もう行くね。きれいな花を咲かせてね」
 けむけむとけっしーは綿毛にさよならを言うと、けむけむたちの大好物の葉っぱが生えているところへと、のそのそと進みはじめました。
「ありがとう」
 ふと声が聞こえた気がして、けむけむは綿毛のほうをふり返りました。
 そこには真っ白な綿毛が、まるで手をふっているかのように、いつまでもふわふわとゆれていました。


 次の春に、その綿毛がいたところには、大きなたんぽぽの花がきれいに咲いていたというのは、また別のお話です。
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