FC2ブログ

☆かすみんの小説置き場☆

スポンサー広告


スポンサーサイト

--.--.--  *Edit 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



*Edit TB(-) | CO(-) 

短編集
ラビの夢


ラビの夢

2009.12.11  *Edit 

 車が行きかう都市から少し離れた山の中で、小さなうさぎたちがおしゃべりをしています。
「僕たちのご先祖様は、お月様からやってきたんだって」
 白うさぎのユキが言いました。
「それ、本当?」
 その言葉に、ラビはキラキラと目を輝かせました。
「うん。おばあちゃんが言ってたんだ。お月様に見えるうさぎの影は、僕たちが昔住んでたっていう証拠なんだって」
 まわりにいる子うさぎたちも、ざわざわとどよめきます。
「すごいなー。ということは、僕たちのご先祖様は空を飛べたってことかな?」
「どうやって飛んでたんだろうね?」
 子うさぎたちは小さな頭をフル稼働させてそれぞれに意見を出し合いますが、なかなか良い答えが出ません。
 そうしているうちに、母親うさぎの呼ぶ声が聞こえてきました。気がつけばあたりはオレンジ色に染まっています。もうすぐ、晩ご飯の時間です。
 子うさぎたちは、「ばいばい」と声を掛け合いながら、それぞれ両親の元へとかけていきました。
「ラビ、何かいいことでもあったの?」
 夢うつつなラビを見て、ラビの母親は優しく言いました。
「うん! あのね、僕たちのご先祖様は月に住んでたって、ユキのおばあちゃんが言ってたんだって。僕たち、昔は空を飛べたってことだよね? それってすごくステキなことだなって思ったの」
 ラビはそう言って、月を見上げました。丸い月が、ラビの黒い目に移ります。
「でもあんな高いところから、どうやって飛んできたんだろう……」
 ラビは小さく首を傾げました。
「いっぱい草を食べて大きくなれば、きっと月まで跳んでいけるさ」
 ラビの父親が、草をもそもそと食べながら言いました。うーんとラビは生返事をしながら、月を見上げます。
(ご先祖様にできたんだから、きっと僕にもできるはずだよね)
 食事を終えると、月明かりに照らされながら、ラビは眠りにつきました。

「ラビー!」
 次の日、切り株の影でアリを観察していたラビは、自分を呼ぶ声に気付いてふと顔を上げました。向こうの方から、白うさぎのユキが駆けてきています。
「あ、ユキ。おはよう」
「うん、おはよう、ラビ」
 ラビの言葉に、にっこりとユキは笑います。
「ねぇねぇ。お月様までどうやっていくのか、思いついた?」
 ラビは首を横に振りました。
「ユキは?」
 えへへーと、ユキは得意そうに笑いました。
「思いついたのっ?」
「思いついたというか、おばあちゃんに聞いたの」
 ユキの祖母は、ラビたちの住む山にいるうさぎの中でも、一番長生きで物知りだと有名な老うさぎでした。
「人間たちが僕たちうさぎを数えるときに、鳥と同じ数え方をするんだって。それは満月の夜に、うさぎが耳を使って飛んでたのを見たかららしいの」
 ぴこぴこ、と長い耳を動かしながら、ユキは言いました。それにつられて、ラビも耳をぴこぴこさせます。
 ラビは切り株によじ登ると、耳をパタパタ動かしながら切り株からジャンプしてみました。ラビの体は一瞬宙を舞いましたが、すぐにすとんと地面に落ちてしまいました。
「だめみたい……」
 ラビは悲しそうに言いました。
「きっと子どもの僕たちじゃあ、耳の長さが足りないんだよ!」
ユキは悲しそうなラビを元気付けようと、大きな声で言いました。そうかもしれないね、とラビはユキの言葉にうなずきます。
「そういえば、うちのお父さんが、草をいっぱい食べたらお月様まで跳んでいけるって言ってた」
「でも、いっぱい食べたら体が重くなって跳べないような気がするけど」
 うーん、と二人は難しい顔で首を傾げます。
 と、その時、二羽の頭の上をすいーっとムササビが飛んでいきました。それを見て、二羽は「あ!」と声をあげました。
「体を広げて風にのれば、飛べるかもしれないね!」
 ユキの言葉に、ラビは大きくうなずきます。
「あそこの崖からやってみよう!」
 ラビとユキは近くにある崖のほうへとぴょんぴょんと駆けていきました。
「うわぁ、高いね……」
 ユキは崖の下を覗きながら、ぶるっと体を震わせました。崖の高さは五メートルといったところでしょうか。
「大丈夫だよ。下は川になってるし、死んだりしないよ」
 ラビはそう言って、大きく息を吸い込みました。
「それじゃ、やってみるね」
 ぴょんっと地面を蹴って、ラビは飛び出しました。風を全身に感じることができるように、ラビは大きく体を広げました。
 しかし、ふわりとした感覚も一瞬のこと。ラビの体は崖の下にある川へと急降下し、どぽーんっという派手な音を立ててラビは川へと落ちてしまいました。
「ラビ!」
 崖の上からユキの心配そうな声が聞こえます。大丈夫、と言おうとして水面に顔を出そうとしたラビですが、思ったよりも川の流れが速く、どんどんと流されていってしまいます。おまけにまわりは切り立った崖になっていて、上陸することもできません。
(どうしよう……)
 ラビは急に恐ろしくなってきました。沈むまいと必死に水を蹴っていた足も、だんだんと疲れてきています。
 途方にくれたラビは何もする気が起きず、ただただ流れに身を任せ、どんどんと下流に流されていきました。
(死んじゃうのかなぁ)
 そんなことを考えているうちに、ラビはとうとう気を失ってしまいました。

 目を覚ますと、そこは見慣れない場所でした。森でも、草原でも、川の中でもありません。ラビが起き上がって辺りをきょろきょろと見回していると、頭の上のほうから声が聞こえました。
「良かった。目が覚めたのね」
 見上げると、そこにいたのは……。
(人間……)
 その人間は、にこにこと笑いながらラビを見下ろしています。
「川をうさぎが流れているんですもの。びっくりしたわ。でも、生きてて良かったわね」
 人間はラビの頭を軽く撫でると、ぱちりとテレビをつけました。初めて見るテレビを、ラビは興味津々で見つめます。
 人間は流れる映像を見ながら、あら、と小さく声をあげました。
「そういえば今日だったわね……」
 テレビに映っているのは、今日打ち上げ予定のロケットと、それを伝えるニュースキャスターの姿です。
 それをじーっと見つめるラビを見て、面白い? と人間は声をかけました。
「あれは月に行くロケットなの。今日打ち上げ予定らしいわ。この家の近くだから、打ち上げが見えるかもしれないわね」
(月……。あれに乗っていけば、月にいけるの?)
 ラビはむくりと起き上がり、周りをぐるりと見回しました。庭へと続く窓が開いています。ラビは入れられていたかごからぴょんっと飛び出すと、一目散にその窓めがけて走りました。
「あ、うさぎさん!」
 人間の声にもかまわず、ラビは庭に飛び出しました。そして、壁にあいた小さな穴から外へと飛び出しました。
「どっちにいけばいいんだろう」
 ラビはきょろきょろと辺りを見回します。すると、さきほどテレビで見たロケットが、向こうの方に小さく見えました。
「あれだ!」
 ラビはロケットの方へと向かって走り出しました。
 車の走る通りを抜け、ロケットの打ち上げ場のフェンスの隙間をくぐり抜けて、ラビはロケットの側までやってきました。
「こんな大きなものが、月まで行くのかぁ」
 上のほうまで見上げると、転んでしまいそうなくらいロケットは大きなものでした。
 その時です。ばさりと上から網が降ってきました。ラビは驚いて飛びのきましたが、それも徒労に終わってしまいました。
「ちょうどいいところにいてくれたな。一匹足りなくて困ってたんだ」
 制服を着た人間が、網の中でじたばたしているラビを見つめながら言いました。
 ラビを網に入れたまま、その人間はロケットへと近づいていきます。
「おーい、小さいけど、こいつでいいかな?」
 ラビの入っている網を持ち上げながら、人間は同じような制服を着ている他の人間たちに声をかけました。
「いいんじゃないか? そんなの気にしないだろうし」
「うん、そうだよな。じゃ、ちょっくら準備してくる」
 仲間の同意を得られたラビを捕まえた人間は、めらめらと燃えている焚き火の前にやってきました。
「宇宙食用に用意してた干し肉の数に一枚誤りがあったらしくてな。ま、悪く思わないでくれ」
 人間はそう言うと、ラビを網ごとぽいっと焚き火の中に放りこみました。
「まったく、月でうさぎの肉を食いたいなんて、頭の良いやつらの考えることにはついていけねぇな……」



「ラビ、大丈夫かなぁ」
 両親にラビが川に落ちてしまって流されたことを知らせてから、ユキは原っぱに座り込んでぼんやりと空を眺めていました。
「運命は誰にも変えられんからのぅ。ユキのせいではないのだから、悔やむことはないよ」
 ユキの隣でうとうととしていたユキの祖母が、つぶやくように言いました。
 と、その時、空をまっすぐと登っていく一筋の光が見えました。
「あ! おばあちゃん、あれ何かな?」
「ん?」
 老うさぎは孫の視線の先をじっと見つめました。上へ上へとのぼっていく光を見つめながら、老うさぎには何かぴんとくるものがありました。
「あれはラビかもしれんのう」
「えぇ? 蛍じゃないんだから、ラビはあんなにぴかぴかしてないよ」
 変なの、と言いつつユキもその光を見えなくなるまでずっと見続けていました。
スポンサーサイト



*Edit TB(0) | CO(0) Tag List  [ * ] 

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
 ◆Home  ◆Novel List  ◆All  ◆通常ブログ画面  ▲PageTop 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。